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急かさないM&A、会社と人をつなぐー株式会社ライフハック 代表取締役 冨田修平
2018年創業。茨城・つくばエリアを拠点に中小企業の事業承継・M&Aを支援する株式会社ライフハック。代表の冨田修平は、会計事務所出身の“数字に強い”アドバイザーだ。成功報酬型でも「急かさない」を貫き、雇用と事業のバトンを静かに、ていねいにつなぐ。地元でM&Aに向き合う理由、現場のリアル、そして会計人と広げる承継の未来を聞いた。
偶然の出会いが転機に
――2018 年に独立されたと聞きましたが、当時はまだ今ほどM&Aが一般的じゃなかった時期ですよね。
そうですね。インターネットのマッチングサイトが出始めたくらいで、“M&Aって何をする仕事なの?”っていう空気がまだ全体にありました。でも、実際に現場に入り込んでみると、会社と会社を“つなぐ”行為そのものがすごく面白くて。数字だけじゃない、人の気持ちやタイミングが絡み合う世界なんだと分かって、一気にのめり込みました。
――今のようにM&Aがメインではなかったんですよね。
そうなんです。最初は財務コンサルティングが中心でした。でも、思ったほど仕事が増えなくて。“このままじゃ広がらないな…”と感じていました。
――そこで転機になる出会いがあった?
はい。会計事務所勤務時代に担当していた顧問先の社長が『M&A会社の社長を紹介するから一回行ってみなよ』って声をかけてくれたんです。あれがなかったら、この仕事には入っていなかったと思います。
M&Aは「譲る人」と「譲り受ける人」の両輪

――M&Aって世間的には“会社を売る・買う”っていうイメージがまだ強いですよね。
そうですね。でも実際には“想いをつなぐ”仕事だと思っています。大きく分けると2つの流れがあります。ひとつは“事業を譲りたい・たたみたい人”。もうひとつは“事業をもっと広げたい・人を採用したい人”。
――譲りたい人は、やっぱり後継者問題が多いですか?
ほとんどがそうですね。高齢化で後継者がいない、でも社員やお客さんには迷惑をかけたくない、というケースです。
――一方で“譲り受ける側”のニーズは?
こっちは“ゼロからやるより引き継いだ方が早い”という発想です。新規事業を1から立ち上げて、人を採用して、仕組みを作って…ってやると時間もお金もかかる。だったらすでに動いている会社を引き継いでしまった方が効率的だよね、と。
――なるほど。だから“譲る側”と“譲り受ける側”がそろって初めて回る。
そうです。どちらか片方だけでは成立しませんし、そこに“人の想い”が乗ると余計に難しくなる。でも、だからこそやりがいがあります。
成功率2〜3割の世界
――ただ、M&Aって“決まればハッピー”ってわけでもないですよね。
はい。統計的には“成功した”と言えるのは2〜3割くらいと言われています。数字上はシナジーがあるのに、実際は上手く回らないことも多い。
――なぜ失敗してしまうんでしょう?
一番は“人”です。数字的には収益が伸びても、社風が合わない、上司との距離感が違う、評価制度が違う…そういうズレで、人が辞めてしまう。承継後にキーパーソンが抜けると、事業そのものが回らなくなることもあります。
――M&Aって“契約がゴール”みたいに捉えられがちですが…
実はそこからが本番です。だから僕は“人が辞めないM&A”を一番大事にしています。条件だけ良くしても、人がついてこなければ意味がないんです。
「急かさない」アドバイザー

――とはいえM&Aって、報酬の仕組み的に早く決めた方がアドバイザーは得ですよね。
そうなんです。多くは成功報酬型なので、決まらないとお金にならない。だから“早く決めましょう”“今がチャンスです”と急かす人もいます。
――でも冨田さんはそうしない?
はい。僕は“急かさない”と決めています。売り主さんにも買い主さんにも、それぞれのタイミングや事情があります。迷っている時に無理に押しても、後で必ずほころびが出ます。
――じゃあ、迷っていたら一回止める?
止めます。『一回考えましょう』『半年後でもいいですよ』って普通に言います。納得して進める方が、結果として成功の確率は上がるんです。M&Aって“今しかない!”みたいに言われがちですけど、実は“今すぐやると失敗する”ってことも多いです。
地元・つくばに根ざして
――拠点は茨城県つくばエリアですよね。東京に出そうとは思わなかったんですか?
もともと茨城出身で、できるだけこの地域で仕事をしたかったんです。東京には専門家もプレイヤーもたくさんいます。でも茨城にはまだ少ない。だったら自分がやる価値があると思いました。
――地元でやることで、逆に全国から相談されるようになったとか。
そうなんです。“茨城でM&Aをやってる人”って意外と少ないので、全国の同業者から『この案件、茨城なんだけど相談できる?』と声がかかるようになりました。地域に特化したからこそ、むしろ全国とつながれるようになった感じです。
茨城の課題と可能性
――茨城の企業って、情報発信が控えめな印象がありますがいかがでしょうか?
その通りです。“うちの中でなんとかする”文化が根強いんですよね。でも実は、外の知見をちょっと入れるだけで伸びる会社がたくさんあります。僕は茨城に“可能性しかない”と思っています。
――全国的にも後継者不足は課題ですよね。
はい。日本には70歳以上の経営者が約250万人いて、そのうち半分が後継者不在だと言われています。さらに、黒字なのに廃業の危機にある会社が約60万社あるとも言われている。これはもう“個人の頑張り”のレベルでは解決できません。
――M&Aアドバイザーの数が足りないということですか?
全国で1万人くらいです。1人が年1件やっても60万社を処理するのに60年かかる計算になる。だから仕組みを変えないといけないんです。
会計人との連携で変える仕組み
――M&Aアドバイザーの数が足りない点についてどのような解決方法がありますか?
私が考えているのは、会計事務所との連携です。会計人って毎月社長と会っているし、信頼関係がありますよね。もしその人たちがM&Aを理解していて、必要な時に“こういう選択肢もありますよ”って差し出せたら、承継は一気に進むはずです。
――今、会社としてもその支援をしている?
はい。ライフハックでは会計事務所向けに『M&A事業部の立ち上げ支援』をやっています。僕ひとりが30件やるより、全国の会計人40万人がそれぞれ1件ずつ関わるほうが、現実的で、地域も救える。そういう構造にしないと、この問題は終わりません。
成約の先にある「ありがとう」

――この仕事をやっていて、一番嬉しい瞬間はどこですか?
成約が決まった瞬間ももちろん嬉しいです。でも本当にグッとくるのは、その後です。多くの経営者にとって、会社を譲るのは一生に一度あるかないかの大きな決断です。そこで“本当にありがとうね”って言われると、重みが全然違うんです。
――“人生の節目に立ち会ってる”感覚に近い?
まさにそうですね。単なるビジネス取引じゃなくて、家族や社員の未来まで含めての話なので。『後を頼むね』って言われると、やっぱりやってて良かったなと思います。
「保険をかけて進む」起業スタイル
――最後に、これから独立したい人にアドバイスをください。
僕は“勢いで会社を辞めて独立する”ことはあまり勧めないです。戻れる場所や食べていけるスキルをひとつ持っておいて、そこに保険をかけながら動く方がいい。副業で小さく始めて、本業を超えたら独立。これが一番再現性があります。
――いきなり全部を捨てなくてもいい。
そうです。“挑戦しろ”って言う人は多いですけど、“戻れるようにしておけ”って言う人は少ない。僕はそっちもちゃんと言いたいですね。続かなかったら意味がないので。
――今後も活動の中心は茨城ですか?
変わらないと思います。茨城の企業って本当に堅実で、真面目で、いい会社が多いんです。だからこそ、次の世代にちゃんとバトンを渡せるようにしたい。
――“会社を残す”ことの意味って何でしょう。
会社を残すということは、そこにある“働く場所”を残すということです。社長1人の問題じゃなくて、社員やその家族の生活にもつながっている。だから、これからも“会社と人をつなぐ仕事”を続けていきたいですね。
会社情報
- 会社名
- 株式会社ライフハック
- 代表取締役
- 冨田 修平
- 所在地
- 茨城県つくば市谷田部
- 設立
- 2018年
- 事業内容
- 中小企業向けM&Aアドバイザリー/事業承継支援/会計事務所向けM&A事業部立ち上げ支援
- 従業員数
- 1名
- 資本金
- 100万円